相続時精算課税と相続税の節税について③
コラム
2025年6月28日 土曜日
前回に引き続いて、相続時精算課税と相続税の節税との関係を、私なりの考えで伝えしたいと思います。
〔前回までのおさらい〕
【相続財産の総額を減らす】
相続税の節税において王道の考え方です。
相続財産の総額を減らすことで相続税を減少させるという考え方です。
《相続財産の総額を減らす方法》
・親族などに生前贈与を行う
・預貯金を死亡保険金に置き換えることで「相続税における死亡保険金の非課税枠(500万×法定相続人の数)」を適用する
・不動産を購入することにより、評価額を圧縮させ相続財産の総額を減少させる
などが考えられます。
また、贈与税と相続税の関係は以下の通りです。
【各贈与税の課税の特徴と相続税の関係】
《相続時精算課税》
・相続時精算課税に基礎控除の110万円が創設された
・この110万円以内の贈与については相続時に加算の対象とはならない
・この110万円以内の贈与については初年度に「相続時精算課税の届け出」を提出しておけば毎年の申告は不要
・基礎控除のほかに特別控除が2,500万円ある
・基礎控除110万円を超える贈与については、全て相続発生時に贈与時の価額で加算される
《暦年贈与》
・基礎控除は110万円である
・基礎控除以下の贈与の場合、申告手続きは不要
・令和7年1月1日以降の贈与の場合、相続財産への加算期間が7年に延長
そして今回は、私なりの相続税の節税に対する最終的な考え方をお伝えしたいと思います。
ポイントは、長期、生前贈与、資産運用です。
【現状の把握】
前回でも触れましたが、今の日本の生活状況は以下のとおりです。
・インフレ率は前年同期で約3.6%
・普通預金の金利は約0.2%
・預金をしているだけでは前年の生活レベルを維持していくことは困難
・日本人の金融資産における株式・投資信託の割合は13.9%(アメリカは46.3%、ヨーロッパ諸国は27.6%)
【資産運用について】
上記にもあるように、日本は世界に比べて資産運用(株式投資など)に対して消極的と言われています。
確かに投資の場合は元本割れのリスクを伴います。
しかし、現状の生活状況でも同じことが言えます。
ありきたりの言葉ではありますが、資産運用をせずに普通預金に預けておくことは「日本円」に投資をしていることと同じことです。
預金をしておくだけではインフレ(物価高)に追いつけず、結果的に財産は目減りしていくことになります。
その上、高額な相続税を支払うと、次の世代の生活はさらに苦しくなるのではないでしょうか。
《資産運用シミュレーション》
最近では簡単にインターネットを通じて証券口座を開設することができます。(最近インターネットを通じての証券口座の乗っ取りが多発しているのでセキュリティ対策は万全にしておかなければいけません。)
資産運用の例を一つ上げると「インデックス投資」というものがあります。
長期の資産運用として世界的に王道の運用である「インデックス投資」とは、「特定の指数に連動した運用を目指す投資方法」です。
「インデックス投資」の中で最もポピュラーな指数に「S&P500」というものがあります。
詳細は割愛しますが、アメリカのTOP企業上位500社の株式に分散投資したようなものです。
「S&P500」指数に連動した投資信託の場合、過去の年平均リターンが4%~8%と言われています。
もちろん投資なので未来のことは予想できませんが、過去の実績で見た現実はこのとおりとなっています。
年平均リターンが4%~8%とはいったいどの位なのでしょうか。
仮に「S&P500」指数に連動した投資信託の年率リターンを5%でシミュレーションしてみたいと思います。
前提として相続時精算課税の特別控除額が2,500万円あるので、投資金額を一括払い2,500万円とします。
また、運用期間については、60歳から相続時精算課税が適用できるため60歳から85歳までの25年間とします。
〔設定〕
運用金額 2,500万円
運用期間 25年
年率リターン 5%
〔資産運用後の価額(税引き前)〕
約8,400万円(運用利益5,900万円)
この結果を見てどう思いますか。
極端な例ではありますが、決して大げさではなく過去の運用成績からみるとこのような結果となります。
【相続税額のシミュレーション】
それでは前回のブログの最後に設定しました例を基にシミュレーションをしたいと思います。
〔設定〕
相続開始時の年齢 85歳
相続財産 預貯金2億円
法定相続人 子供2人
相続税の総額 3,340万円
「設定」にあるように相続財産が仮に預貯金のみの場合は相続税額が3,340万円になります。
《資産運用を行った場合》
仮に60歳の時に「相続時精算課税」を適用して2,500万円を資産運用していれば、納める相続税の金額は変わりませんが、資産運用による運用益(4,720万円(税引き後))で相続税の全額がカバーできることになります。
当たり前ですが子供二人に「相続時精算課税」を適用して、同じく資産運用を行っていれば、当然倍の金額(9,440(税引き後))になるということです。
《さらに110万円の贈与を追加した場合》
2,500万円を一括で贈与した上に、さらに110万円の贈与を行った場合は、
110万円×25年×二人=5,500万円の贈与が行われることにより、相続財産の総額が1億4,500万円となります。
この場合、相続税の総額は1,690万円まで減少します。
相続財産が5,500万円減少することで相続税が1,650万円も減少したことになります。
納付税額も減少し、また、資産運用による納付資金の確保もできているので納税が大分楽になると思います。
この税額の減少のからくりはまた次回ご説明したいと思います。
長文になってしまい申し訳ありません。
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