相続時精算課税と相続税の節税について②

コラム

2025年6月21日 土曜日

前回に引き続いて、相続時精算課税と相続税の節税との関係を私なりの考えをお伝えしたいと思います。

 

《前回のおさらい》

まず、前回のおさらいですが、相続税の節税として真っ先に思いつくことが「相続財産の総額を減らす」ということです。

その「財産を減らす」という行為の手段として親族に対する贈与を行います。

 

ただし、贈与を行った場合、暦年課税の場合は相続開始の7年前に行った贈与財産については相続財産に加算することになるよう税制改正が行われました。

 

これでは相続開始前7年間の贈与が無駄になってしまいます。

 

《相続時精算課税の改正》

また、相続時精算課税についても税制改正が行われました。

その内容は、

・相続時精算課税に基礎控除の110万円が創設された

・この110万円以内の贈与については相続時に加算の対象にならない

・この110万円以内の贈与については初年度に「相続時精算課税の届け出」を提出しておけば毎年の申告は不要

という内容です。

 

《毎年110万円以内の贈与》

相続税の節税を行うための贈与として王道の方法が、毎年110万円の贈与を行うことでした。

贈与税の基礎控除は暦年課税の場合110万円であるため贈与税がかからないからです。

しかし上記のとおり暦年課税の贈与に対する相続財産への加算期間が7年になったこともあり、従来の贈与の仕方では節税を行うことが難しくなってきました。

 

そこで改正された相続時精算課税の出番です。

 

結論から申し上げますと、毎年110万円しか贈与を行う予定がない方は従来の暦年課税から相続時精算課税に切り替えた方がいいと思います。

相続税の加算の対象にもならず、また、申告の手続きも翌年度以降は必要ないからです。

以下は国税庁が発表した数値です。

【相続時精算課税の申告人員】

令和元年 4万2千人

令和2年 3万9千人

令和3年 4万4千人

令和4年 4万3千人

令和5年 4万9千人

令和6年 7万8千人

 

令和6年から急激に申告件数が増えていることが分かります。

令和6年分の贈与は明らかに相続税の節税を意識したものです。

まだ暦年課税から切り替えていない方は検討する必要があるのではないでしょうか。

 

《相続時精算課税を改めて考えてみた》

〔創設意図〕

元々の相続時精算課税の創設意図は、冷え切った経済情勢を回復させるため、父母や祖父母の財産を子や孫に早期に移転させ、有効活用することにより消費を促進し経済を活性化させるための制度です。

 

しかし日本で贈与と言えば「相続税の節税のためにある」という認識が高く、また、「贈与しても結局相続の時に加算するのであれば意味がない。」「一度制度を選択すると元の暦年課税に戻れない」ということで積極的に利用される方は少ない印象でした。

 

〔相続時精算課税のメリット〕

相続時精算課税のメリットとしては「110万円以内の贈与であれば相続時に加算されない」と答える方がほとんどだと思います。

現に国税庁の数字もそれを示しています。

しかし、私が思う相続時精算課税の最大のメリットは「2,500万円の特別控除があり、相続時に加算する金額は贈与時の価格である」ということです。

 

《日本人の金融資産における株式・投資信託の割合》

日本人の金融資産における株式・投資信託の割合は13.9%だそうです。

ちなみにアメリカは46.3%、ヨーロッパ諸国は27.6%だそうです。

 

また日本人の金融資産額は20年間で約2倍になっているのに対して、アメリカでは20年間で約8倍になっているとのこと。

いかに日本人が株式などの資産運用に消極的であるかが分かります。

 

「資産運用なんて財産が減るかもしれないのでやらない」という方も多数いらっしゃいますが、みなさん現実には投資をしています。

 

現金・預貯金で資産を保有している方は俗にいう「日本円」に投資をしているということです。

 

〔インフレについて〕

ここ数年物の価格が急激に上がっています。

「去年まで1,000円で買えていたものが今年は買えなくなっている」という経験が誰しもあると思います。

 

インフレには2種類のインフレがあります。

生産者のコストが上がり商品の価格が上がる「コストプッシュインフレ」と、景気拡大によって人々の購買意欲が高まり需要の増加により価格が上がる「ディマンドプルインフレ」です。

 

当然好ましいのは「ディマンドプルインフレ」でありますが、現在の日本は「コストプッシュインフレ」と言われています。

つまり景気は良くないのに物価が上がっている状況です。

 

日本の景気目標としては毎年2%の「ディマンドプルインフレ」が目標でしたが、ここ30年間インフレ0%が続いていました。

 

そして近年のコロナウイルスの蔓延やロシア・ウクライナ戦争により資材コストなどが増加し「コストプッシュインフレ」の状態にあるといわれています。

 

日本の現在のインフレ率は前年同期で約3.6%だそうです。

ちなみに普通預金の金利は約0.2%です。

つまり普通に生活しているだけでは前年の生活レベルを維持していくことは難しいということです。

 

〔節税の皮算用???〕

相続財産2億円で法定相続人が子供2人の場合、相続税の総額は3,340万円です。

この前提で次回は節税の検証を行ってみたいと思います。

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