新しい相続時精算課税制度について
コラム
2025年3月14日 金曜日
令和6年の申告から贈与税の「相続時精算課税制度」が新しくなりました。
主な変更点は以下のとおりです。
・基礎控除110万円が創設された
・基礎控除以下の贈与であれば贈与税の申告はいらず「相続時精算課税選択届出書」のみの提出で適用可能
・翌年以降の贈与については、基礎控除以下であれば申告する必要がない
・基礎控除以下の贈与に関しては、相続時に相続財産に加算する必要がない
・他の贈与者から暦年課税の贈与を受けた場合、暦年課税・相続時精算課税それぞれの基礎控除110万円ずつが併用可能
従来の相続時精算課税制度より格段に使いやすくなったため、令和6年分の贈与からこの制度を利用されたかもたくさんいらっしゃると思います。
【相続時精算課税適用者が、同年中に複数の特定贈与者からの贈与とそれ以外に暦年贈与を受けた場合の基礎控除の取り扱い】
今回の改正で大きく変わったことの一つに相続時精算課税に基礎控除110万円が創設されたことがあります。
今後贈与を行っていく中での基礎控除の取り扱いについて整理したいと思います。
(問)
令和6年分の贈与の内訳
受贈者 個人A
贈与者 父甲 1,100,000円の贈与(相続時精算課税を適用)
贈与者 母乙 1,100,000円の贈与(相続時精算課税を適用)
贈与者 祖父丙 1,100,000円の贈与(暦年課税を適用)
上記のような贈与が同一年にあった場合はどうなるでしょうか。
(回答)
相続時精算課税の基礎控除額110万円と暦年課税の基礎控除額110万円を併用適用することはできますが、これらは、贈与を受けた人ごとの1年間の金額となります。
したがって、相続時精算課税と暦年課税を受けている受贈者の基礎控除額は220万円が限度となります。
そして、複数の特定贈与者(相続時精算課税の選択に係る贈与者)から同年中に贈与を受けた場合は、基礎控除を特定贈与者の課税価格で案分した金額を特定贈与者から贈与を受けた財産の価額から控除します。
丙からの暦年贈与は、暦年贈与の基礎控除以下につき、贈与税額は0円となります。
1 相続時精算課税に係る基礎控除額の案分計算
(1)甲からの贈与に係る基礎控除額
1,100,000円(基礎控除額)×1,100,000円(甲の課税価格)/2,200,000円(甲乙の合計額)=550,000円
(2)乙からの贈与に係る基礎控除額
1,100,000円(基礎控除額)×1,100,000円(甲の課税価格)/2,200,000円(甲乙の合計額)=550,000円
2 個人Aの贈与税申告について
甲乙からの相続時精算課税の贈与税額は次のようになります。
(1)甲からの贈与に係る贈与税額
1,100,000円(課税価格)-550,000円(基礎控除額)-550,000円(特別控除額)=0円
(2)乙からの贈与に係る贈与税額
1,100,000円(課税価格)-550,000円(基礎控除額)-550,000円(特別控除額)=0円
特定贈与者(甲乙)からの贈与価額はそれぞれ基礎控除額を上回ることから、個人Aは、令和6年分贈与税申告書と甲乙に係る「相続時精算課税選択届出書」を、贈与税の申告期限までに個人Aの所轄税務署へ提出する必要があります。
まとめ
(1)基礎控除額の案分計算
相続時精算課税の特別控除額(2,500万円)は特定贈与者ごとに適用がありますが、基礎控除額は受贈者ごとに毎年認められるものです。
したがって、同年中に複数の特定贈与者から贈与を受けた場合であっても基礎控除額は110万円が限度となります。
この場合、各特定贈与者から贈与を受けた財産について適用される基礎控除額は、110万円を特定贈与者ごとの贈与税の課税価格で案分して計算することになります。
(2)贈与財産の相続財産への加算
従来の相続時精算課税制度では、特定贈与者から贈与を受けた特別控除前の価額が特定贈与者の相続税課税価格に加算されていましたが、令和5年度改正により、基礎控除額の控除後の価額が加算対象となりました。
したがって、暦年贈与と異なり、特定贈与者の相続の同年中に110万円の贈与があった場合でも、この贈与については、相続税の加算対象から除かれることになります。
つまり、相続直前の節税が可能となったということです。
カテゴリー: コラム