相続税申告書の作成手順②
コラム
2024年12月8日 日曜日
前回に引き続き当事務所が相続税申告書の作成依頼を受けた場合の申告手順について注意点を交えながら説明していきたいと思います。
【生命保険】
《参考書類》
保険証書、保険金支払明細書など
・契約者はお亡くなりになった方になっているか
・保険料の支払いはお亡くなりになった方だったか
・入院給付金の支払いはないか(死亡保険金の適用はなく遺産分割の対象になる)
・遅延利息を相続財産に計上していないか(受取人の雑所得になる)
★チェックポイント
保険契約にはお亡くなりになった方が被保険者である場合以外のケースもよくあります。
この場合保険事故は発生していませんので保険金の支払いはありません。
しかし保険料の支払いをお亡くなりになった方が行っている場合は「生命保険の権利」として相続財産に計上する必要があります。その場合は相続開始日の解約返戻金の金額で申告することになります。
【その他の財産】
相続税の対象となる財産は基本的に経済価値のあるすべての財産になります。
以下のような財産が申告漏れとなりやすいので特に注意が必要です。
・借地権(土地の所有権は持っていないが賃料を支払いその土地の上に建物を建てている。)
・建物更生共済の権利
・太陽光発電設備(最近では自宅の屋根に太陽光発電設備が設置してあることがよくありますね。)
・金地金
・相続発生後に支払われる各種療養費や保険料の還付金
上記の財産は特に申告漏れになりやすい財産ですので特に注意が必要です。
続いて相続税の計算上控除される債務や葬式費用についても触れておきたいと思います。
【債務】
債務とはお亡くなりになった方が本来支払うべきものを、相続人が相続開始後に代わりに支払ったものです。
・医療費(診療費や入院費)
・施設費
・税金関係(固定資産税、住民税など)
・借入金
★チェックポイント
お亡くなりになった方が生前に墓碑を購入しその代金が未払いであった場合は、その金額を債務として相続財産から控除することはできません。
【葬式費用】
葬式費用は相続開始時に存在するお亡くなりになった方の債務ではありませんが、相続開始に伴う必然的な出費であることから控除の対象となります。
(費用として計上できるもの)
・葬式費用(通夜・告別式の費用)
・埋葬費
・火葬費
・納骨費
(費用として計上できないもの)
・香典返し
・四十九日などの法要費
・墓地・墓碑の購入費
★チェックポイント
葬式当日にお寺に対してお布施を支払った場合、領収書がなくても葬式費用として計上することができる。
1 相続税額の計算方法
では実際の相続税の計算方法はどうなるかというと、
(相続財産+生前贈与-債務・葬式費用-基礎控除)=課税遺産総額
課税遺産総額×各人の法定相続分=各人の法定相続に基づく取得金額
各人の法定相続に基づく取得金額×税率=各人の相続税の基となる税額
各人の相続税の基となる税額の合計額=相続税の総額
計算方法を式で示せば上記のとおりとなります。
計算式で示せばこれだけのことですが結構わかりづらいですね。
相続税の計算方法は各人別に行うのではなく、財産の総額で考えます。
- 財産の総額を計算する
- 財産の総額から債務・葬式費用を控除する
- 上記②の金額に生前贈与の金額(3年(7年)加算及び相続時精算課税財産)を加算する
- 上記③の金額から基礎控除(3,000万+600万×法定相続人の数)を控除する
- 上記④の金額に各相続人の法定相続割合で取得したと仮定した金額の税金を算出する
- 各人の上記⑤の金額の合計額を算出する
以上が相続税の総額の計算方法です。
上記方法で算出した税額を実際の各相続人の相続財産の取得割合に応じて各人が負担すべき相続税を算出します。
なお相続税には下記のような税額控除があります。
・配偶者の税額軽減
・未成年者控除
・障害者控除
・贈与税額控除
など
★チェックポイント
税額控除の中でも特に注意が必要なものは障害者控除です。
障害者控除とは相続開始時点において相続された障害者の年齢が85歳未満の方が対象となります。その控除額は
10万円(注)×(85歳-相続開始時の年齢)とかなり大きいものです。
注:特別障害者の場合は20万円
この金額が障害者本人から引ききれない場合はその方の扶養義務者から控除することができます。
ただしこの障害者控除を適用させるためには必ずその障害者の方が相続により財産を取得していることが要件となっています。
相続税の申告手順についてざっくりと説明しましたが、ここに書ききれないことがまだまだたくさんあります。
相続放棄があった場合の取り扱いや、二次相続を考えた相続など検討すべきことが山のようにあります。
相続についてのご相談は当事務所までお気軽にご連絡ください。
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