相続税申告書の作成手順①
コラム
2024年11月29日 金曜日
今回は当事務所が相続税申告書の作成依頼を受けた場合、どのような手順で申告書の作成に至るかをかいつまんでご紹介したいと思います。
ボリュームがあるため数回に分けてご紹介したいと思っております。
1 相続人は誰
まずは今回の相続における相続人・相続分を確認します。
《参考書類》
・お亡くなりになった方の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・遺言書の有無の確認
・相続放棄の有無
相続人の人数が確定することにより相続税の基礎控除、生命保険・死亡退職金の非課税金額が計算できます。
★チェックポイント
相続人の中に未成年の方がいる場合は代理人を立てる必要がありますが、代理人が父母などの場合は遺産分割協議の際に利益相反の関係に当たり分割協議が成立しません。
その場合、家庭裁判所に未成年者の法定代理人を選定してもらう必要があります。
2 相続財産とは
相続税がかかる財産とはどのような財産なのでしょうか。
基本的には非課税財産を除くすべての経済的価値のある財産です。
具体的には、土地、家屋、現金、預貯金、有価証券、事業用財産、貴金属、宝石、書画骨董、家庭用財産などです。
・非課税財産
墓地、仏壇、仏具など
なお、相続により取得した財産ではないものの死亡保険金、死亡退職金なども相続税の課税対象となります。
また、生前にお亡くなりになった方から贈与により財産を取得していた場合、相続時精算課税制度を適用して贈与税の申告を行った財産や相続開始3年以内(令和6年1月1日以降の贈与については7年以内)に暦年課税による贈与を受けている財産についても相続税の課税の対象となります。
【不動産】
《参考書類》
固定資産の名寄帳、固定資産の評価額証明書、登記事項証明書、地図、測量図など
・先代名義の不動産はないか
・他の市町村の不動産はないか
・共有名義による持分の確定
・借地権などの権利が設定されているものはないか
・農業経営基盤強化促進法により貸し付けられた農地はないか
・登記地積と課税地積との相違はないか
・路線価地域か倍率地域
・都市計画区域内の土地か
・農用地区域内の土地か
・マンションの敷地はないか
・地積規模の大きな宅地の評価に該当するかどうか
・アパートなどの場合、相続開始時の入居状況はどうか
・小規模宅地の特例に該当するかどうか
などなど。
不動産の評価は相続税の申告書を作成する上で最も重要かつ困難なものとなっています。
現地を確認し、その土地そのものの自用地評価を行ったうえで、権利設定による減額、特例適用の可否等検討項目がたくさんあります。
★チェックポイント
面積が1,000㎡以上の宅地や市街地農地等については「地積規模の大きな宅地」として約25%減額できる可能性があるので要注意です。
【現金】
・相続開始時にお亡くなりになった方が現金をいくら持っていたか。(葬儀代金を支払った後の金額ではありません。)
・相続人の方などで、お亡くなりになった方から預かっていた現金はないか
・タンス預金はないか
★チェックポイント
相続が開始されると当然ですがすぐに葬儀等の準備に追われます。相続開始時にお亡くなりになった方が現金をいくら持っていたか確認していないことが多々ありますので、葬儀に使った金額、そのお金をどこから準備したのかをできるだけ細かくメモを取っておくことが大事になります。
【預貯金】
《参考書類》
相続開始日時点の残高証明書、使用済みの通帳など
・相続開始の直前に出金した金額はないか(葬儀代など)
・家族名義預金はないか
・親族間での資金の移動はないか
・使途が不明な高額な出金はないか
・ATMを使って50万ずつ出金していないか
・高額な振込はないか
・海外への送金はないか
・提示されていない金融機関(生命保険会社等)への支払いはないか
などなど。
税務調査において最も確認を求められる項目が現金・預貯金関係です。
特にお亡くなりになった方が家族の名前を使用して管理している「家族名義預金」については税務調査においてたびたび指摘されます。
相続税を申告すべき財産はお亡くなりになられた方の名義の預金だけではありません。名義が家族という状態を利用して預金を申告から除外している場合には重加算税が付加されるケースがよくあります。預金を申告する場合は必ず「家族名義預金」の有無を確認します。
★チェックポイント
相続開始直前に出金した現金については税務調査で必ず指摘されますので、現金・預貯金を申告する際は再度チェックするようにしましょう。
【有価証券】
《参考書類》
株式数や投資信託口数の残高証明書、取引明細書など
有価証券と一口に言っても「上場株式」「非上場株式」「投資信託」などの種類があり、評価方法も様々です。
★チェックポイント
有価証券も預貯金同様に家族名義を使用した取引が多々あります。
預貯金と同様に、お亡くなりになった方の名義の有価証券のみを申告すればいいというわけではありません。
・実際に運用の指示・判断をしていたのは誰なのか
・利息や配当は誰の口座に入金されていたのか
・その入金先の口座はだれが管理していたのか(通帳・印鑑など)
これらを基に申告すべき財産かどうかを判断していきます。
★チェックポイント
「非上場株式」(同族株式)の評価については、株式を誰がどれだけ相続するかによって、その会社に対する支配力に応じた評価方法(原則的評価方式or配当還元方式)が変わる場合があります。計算方法が全く違うため遺産分割の際はより慎重に行う必要があります。
今回の紹介はここまでにしたいと思います。
かいつまんでご紹介しようと思いましたがなかなか難しいですね。
次回は「死亡保険金」の取り扱いから説明したいと思います。
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