マンションの評価方法が変わりました
コラム
2024年11月10日 日曜日
《令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した「居住用の区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)の評価方法が変わりました》
これまで相続税や贈与税の節税対策の一つとして大きな役割をはたしてきた「マンション節税」ですが、令和4年4月19日の最高裁判決を発端に従来の評価方法に代わり個別通達が発遣されることとなりました。
【相続税・贈与税における財産評価】
そもそも相続税・贈与税における財産の価額は、相続税法22条の規定により「財産の取得の時における時価による」こととされています。
ただ「財産の取得の時における時価」といわれても一般人には到底分かるものではないため国税庁では「財産評価基本通達」において各種財産の具体的な評価方法を定めています。
今回はこの財産評価基本通達の一部が改正されたということです。
【これまでのマンションの評価額と時価について】
マンションの「相続税評価額」については、路線価方式の計算の性質上「時価」との大きな乖離が生じるケースが非常に多く、その「時価」と「相続税評価」との差額を利用して相続税の節税が行われてきました。
「預金で1億円持っていれば1億円について税金がかかるが、マンションで持っていれば4,000万円にしか税金がかからず得である。相続税の申告が終われば売却してまた預金に戻せばいい。」
という感じです。
(マンションと時価との乖離率(全国平均))
乖離率=市場価格÷評価額
平成25年 1.75
平成26年 1.94
平成27年 2.00
平成28年 2.30
平成29年 2.40
平成30年 2.34
上記のとおり平成30年時点では2.34倍となり、昨今のマンション価格の上昇を考えると現在はさらに乖離率は大きくなっていると予想されます。
ちなみに上記の例でいう数字は、時価1億円のマンションが4,000万円の評価であった場合、1億円÷4,000万円=2.50の乖離率ということになります。
なお。平成30年のマンションの乖離率(2.34倍)の内容を分析すると、乖離率が2倍以上のものが全体の65%を占めているそうです。これは全国平均の数字ですので地方都市より地価が高い主要都市部では乖離率が5倍を超えることも珍しくないそうです。
(一戸建て乖離率)
ではマンションではなく一戸建ての場合はどうかというと、乖離率は1.66(評価水準=60%=100÷60)となっています。
路線価の価格は地価公示価格の80%(100÷80=乖離率1.25)となっているので評価の安全性を見越して許容範囲というところです。
【これまでのマンションの評価方法】
①建物の価額
②敷地利用権の価額
①+②の合計がマンションの評価額とされていました。
例
(建物の価額)
市町村が発行する固定資産税評価額を用いて計算します。
固定資産税評価額 10,000,000円
マンションの使途 被相続人の居住用
10,000,000×1.0=10,000,000円(相続税評価額)-①
(敷地権の価額)
マンション全体の敷地面積 3,000㎡
路線価 100,000円
敷地権割合 1,000,000分の5000
100,000円×3,000㎡×5,000/1,000,000=1,500,000円(相続税評価額)-②
①+②=11,500,000円
【これからのマンションの評価方法】
これからのマンションの評価方法も従来同様建物部分と敷地権部分とを分けて評価し、最後に合算します。
従来の評価方法と異なる点は、評価が時価から離れすぎている場合は補正するという点です。
ではどの位時価から離れていれば補正の対象になるかというとですが、簡単に言うと評価が時価の6割を下回っていた場合です。
この6割という数字は一戸建ての評価の場合が時価の60%となっているためそこに寄せた数字です。
ではいったいどの位評価に影響があるのでしょうか。
実際に高松市の物件で確認してみたいと思います。
〔評価物件〕
築年数 18年
総階数 14階
所在階 4階
専有部分の面積 100㎡
敷地全体の面積 2,500㎡
敷地権割合 740,000分の11,000
建物固定資産税評価額 5,000,000円
路線価 100,000円
例
《従来の評価方法》
(建物の価額)
5,000,000円×1.0=5,000,000円-①
(敷地権の価額)
100,000×2,500㎡×11,000/740,000=3,716,216円-②
①+②=8,716,216円
《改正後の評価方法》
上記〔評価物件〕の条件を基に計算した数値は
評価乖離率 2.354
評価水準は 0.4248となり
評価水準が0.6(時価の60%)を下回ったため補正の対象になります。
補正率は 2.354×0.6=1.4124となります。
※上記評価乖離率は〔評価物件〕の各項目を国税庁が提供している補正率の計算シートで簡単に計算できます。
従来の評価方法で計算した結果に補正率を乗じて改正後の評価額を計算します。
(建物の価額)
5,000,000円×1.0=5,000,000×1.4124(補正率)
=7,062,000円-①
(敷地権の価額)
100,000×2,500㎡×11,000/740,000=3,716,216×1.4124(補正率)
=5,248,783円-②
①+②=12,310,783円
12,310,783円(改正後の評価額)-8,716,216円(改正前の評価額)
=3,594,567円(評価差額)
いかがでしょうか。
この差額が大きいか小さいか人によって感じ方は異なると思いますが、私自身は思ったより大きいと感じました。
この物件は高松市でも比較的平均的なマンションであり、マンションの評価方法に改正があったといっても都市部のタワマン位しか対象にならないのではないかと予想していたからです。
マンションをお持ちの方は将来の相続税申告に備え一度計算してみてはいかがでしょうか。
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