相続税の税務調査

コラム

2024年7月12日 金曜日

毎年7月10日は国税局・税務署の定期人事異動の発表日です。

この日を境に新事務年度が開始し税務調査事務も繁忙期を迎えます。

 

今回は相続税の税務調査の対象にならないために、どのような点に注意して申告書を作成しなければいけないかを説明したいと思います。

 

それはつまり「誤りの少ない申告書」を作成するということです。

 

税務調査では当然申告書の誤っている箇所を指摘し、修正申告を行うよう指導されるわけですので誤っている箇所がなければ調査に入られることはありません。(亡くなった方が特定の職業の方は除きます。)

 

ではいったいどのような箇所が誤りやすいかをご説明します。

 

【国税局・税務署の調査事績】

《令和4事務年度 高松国税局管内の相続税の実地調査事績》

実地調査件数 347件

申告漏れ件数 327件

申告誤り割合 94.2%

※参考 国税庁《報道発表資料》から抜粋

 

上記は高松国税局管内(要は四国の税務署)における令和4事務年度(令和4年7月~令和5年6月)の相続税実地調査件数及び申告漏れ件数です。

 

つまり国税局・税務署の調査を受ければほぼ修正申告の提出を余儀なくされるわけです。

 

また、申告漏れ財産の割合は以下のとおりです。

 

〇現金預貯金 39.4%

〇有価証券 7.1%

〇土地 8.7%

〇その他 42.9%

 

「その他」の割合が多くなっているのは、相続税の申告において申告すべき財産は経済的価値のあるすべての財産であるため、例えば死亡保険金や生命保険の権利、金地金など多種多様な財産が申告漏れとなっているということです。

 

では実際に申告書を作成する上でどういった箇所を注意すべきなのでしょうか。

 

 

【申告書作成時に特に注意すべき事項】

※被相続人=亡くなった方を指します

 

・被相続人名義の資産が申告漏れとなっている

(不動産・預貯金・有価証券など)

 

・被相続人が家族の名義を使っているものがある

(預貯金・有価証券など)

 

・相続人の財産が収入に比して過大である

(預貯金・有価証券など)

 

・死亡保険金が申告漏れとなっている

 

・契約者が被相続人で、まだ保険事故が発生していないものがある

(保険権利)

 

・保険料支払者が被相続人で、契約者が被相続人以外の保険がある

(保険権利)

 

・相続開始前に高額な不明出金がある

 

・相続開始直前に出金がある

 

・贈与を行っているつもりの財産がある

 

・相続開始後に相続人に高額な入金がある

 

・財産評価の誤りがある

 

・特例適用の誤りがある

(小規模宅地の評価の特例等)

 

・相続税額の加算漏れがある

(2割加算漏れ)

 

 

以上簡単に記載しましたが申告書を作成する上で少なくとも確認しなければいけない事項です。

 

【家族名義預金】

この中でも当事務所で特に相談が多い事項はズバリ「家族名義預金」です。

 

「家族名義預金(保険)」とは、被相続人が家族の名前を使用して預貯金や保険を作成していることです。

 

相続が発生し、いざ財産確認をしてみると、自分の知らない(あるいはうっすらと存在は知っている)預金通帳や保険証書が発見されるという話はよくあることです。

 

はたしてこの預貯金等は申告すべきか否か。ということころです。

 

結論から申しますと実際に「贈与でもらったもの」以外は全て申告する必要があります。

(贈与でもらったものでも相続開始3年以内(令和6年以降は7年以内)にもらったものは相続財産に加算する必要があります。)

 

「贈与でもらったもの」とは贈与契約が行われ実際に贈与の履行があったものです。

この場合の契約は書面でも口頭でも構いません。

また、贈与の履行があったものとは、その対象物が贈与の相手方が自由に処分あるいは使用・収益を行える状況を指します。

 

よく贈与税の申告をしていれば「贈与の履行があった」と勘違いしている方がいますが、申告があるということと贈与の履行があったということは別問題です。

 

家族名義預金というのは、被相続人が残された家族の将来を心配し、自身の中での財産の分け方を区別している部分がほとんどです。

 

また、保険契約にも同様なことが言えます。

契約者を家族の名前にして被相続人が保険料を負担するケースです。

 

この場合は契約者が遺贈により財産を取得したこととみなされ(みなし相続財産)ます。

お孫さんが契約者になっていれば、孫は相続人でないケースがほとんどなので相続税額の2割加算の対象にもなります。

 

預貯金や保険の作成の仕方にはその人のくせが出ます。

預金の履歴をみれば誰がその預金を作ったのか(被相続人?名義人?)あるいは実際に贈与が行われているのかどうかは容易に想像がつきます。

 

 

【チェックシートの活用】

最後に、国税庁から「相続税の申告のためのチェックシート」とういものが公表されています。

申告書を作成するうえで基本的なこと、あるいは忘れがちなことなど大変役立つものですので参考にしてみてください。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/2023/pdf/r05-01.pdf

 

カテゴリー: