駆け込み贈与は今年まで!
コラム
2023年2月26日 日曜日
【生前贈与と相続税のルール変更】
2024年に相続税対策の定番である生前贈与が大きく変わります。
贈与税の課税制度は大きく分けて1.暦年課税、2.相続時精算課税の二つの制度があります。
今年の税制改正により
1 暦年課税・・・使いにくくなる
2 相続時精算課税・・・使いやすくなる(しかし節税効果は少なくなる)
というふうに変わります。
今年も早や2カ月が過ぎようとしています。
2023年は、現行制度による「駆け込み贈与」のラストチャンスです。
相続税の節税を真剣に考える方は行動を起こすのみです!
【2024年からの新制度について】
2024年から相続・贈与のルールが65年ぶりに大改正されます。
ではどのように変わるのか現在分かっている情報で少し触れてみたいと思います。
1 暦年課税・・・相続開始前の贈与の持ち戻し期間が3年から7年へと延長
2 相続時精算課税・・・従来からある2,500万円の特別控除に加え110万円の基礎控除が新設される。また、110万円の基礎控除以下の贈与については申告が不要であるとともに相続時の持ち戻しの対象とならない。
・税制改正前に懸念されていた、「暦年贈与の基礎控除の排除」、「相続人以外への生前贈与が相続時の持ち戻しの対象になる」については、今回の税制改正の対象にはなりませんでした。
【相続時の持ち戻しとは?】
ここで「相続時の持ち戻し」についておさらいです。
・相続時の持ち戻しとは
相続又は遺贈(遺言)により財産を取得した方が、相続開始前に亡くなった方から贈与を受けていた場合、その財産を、その贈与時の価格で相続財産に加算するということです。
つまり持ち戻し期間の生前贈与による節税効果は「ない」ということになります。
今回の税制改正で暦年課税の「持ち戻し期間(亡くなった時から生前贈与までの期間)」が3年→7年に改正されるということです。
ちなみに相続時精算課税制度に持ち戻しの期間に制限はなく、「相続時精算課税制度」を適用して贈与が行われた場合、そのすべての財産が贈与時の価格により相続財産に加算されることになります。
【生前贈与と相続税の節税の関係】
今までの生前贈与を使った相続税の節税は、暦年課税の制度を使い、相続発生時の相続財産を少なくして相続税を少なくするとやり方でした。
従来の制度では、相続開始時の持ち戻し期間が相続開始前3年間と比較的短い期間であったためそのやり方で一定の効果が得られてきました。
今後はその持ち戻し期間が7年になります。
例えば2031年2月(令和13年2月)に相続が発生した場合、2024年2月(令和6年2月)以降に贈与した財産が相続時に加算されることになります。」
7年も前に贈与した財産が結局は相続税対策にならないということです。
結構な長期間と思いませんか?
【今後の相続税の節税対策について】
今後の主流となる相続税対策は以下のとおりです。
子供に対する贈与・・・相続時精算課税制度を使い110万円
孫に対する贈与・・・・今まで通り暦年課税を使い贈与を行う
子の配偶者に対する贈与・・・今まで通り暦年課税を使い贈与を行う
※持ち戻し期間の対象となる方は「相続又は遺贈(遺言)により財産を取得した方」になるので、孫であっても遺言や死亡保険金の受取人になっている場合持ち戻しの対象となるので注意が必要です。
【110万円の贈与について】
多くの方が生前贈与を行う場合、110万円の贈与を行います。
なぜでしょうか?
そうです。贈与税の申告が必要ないからです。
ではその金額は本当に正しいのでしょうか?
税制改正になっても相続時精算課税制度で110万円の控除が使えるから何も変わらないのでは?
少し検証してみましょう。
《設定》
亡くなった方・・・父
相続人・・・2人(長男、次男)母はすでに他界
相続財産・・・2億円
A.相続対策なしの場合
相続税の総額・・・3,340万円
B.110万円を長男・次男に贈与した場合
相続税の総額・・・3,274万円
C.1,000万円を長男・次男に贈与した場合
相続税の総額・・・2,740万円
贈与税の税額・・・354万円
総負担税額・・・3,094万円
AとCを比較した場合、CはAに比べて246万円少ない納税額となります。
この計算はでは246万円の差額になりましたが、何が言いたいかというと、110万円が必ずしも正解ではないということです。
110万円で贈与をしていく場合は長期間での計画が必要となります。
またそれほど多くの節税効果は見込めません。
税制改正により相続時精算課税制度を選択した場合は、子供に対する贈与は110万円が頭打ちになり大きな節税効果は見込めません。
孫や子の配偶者などへ暦年贈与を行った場合は短期間で効果的な節税が見込めるということです。
相続税の節税対策で大事な事は
1.現在の概算による相続税額を計算する。
2.相続税と贈与税の税率の差を利用する。
3.贈与者・受贈者で「相続税対策を行う」という共通認識を持つ
です。
【今年はラストチャンス!】
計算上での節税効果を検証することは比較的容易にできます。
ただ私のお客様でも「自分の今後の生活資金が心配」「子や孫に早くに財産を渡してしまってはすぐに使ってしまうかも」「お金のありがたみが分からなくなるのでは」との声も多数耳にします。
また、自分一人で判断し、誤った節税対策を行ってしまい時間と労力を無駄にしている人がたくさんいることも事実です。
一人で悩まずに一度ご相談ください。
少しの工夫で、余計な税金を払わず大事な資産を守っていきましょう。
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