生前贈与はお早めに(令和5年度税制改正)
コラム
2022年12月17日 土曜日
令和4年12月16日、与党より「令和5年度税制改正大綱」が発表になりました。
以前より話題となっていた、「相続税・贈与税の一体化」について結論が出たということです。
【令和5年度税制改正大綱】
《資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築》
〇高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することとなれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。
〇高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。
〇暦年課税との選択制は維持しつつ、相続時精算課税制度の使い勝手を向上させる。
(1)相続時精算課税制度について、次の見直しを行う。
・相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
(おさらい)
・相続時精算課税制度とは60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫などの推定相続人に対して贈与をした際に、暦年課税の基礎控除に代わって特別控除として2,500万控除できる制度です。
・暦年課税制度との大きな違いは、暦年課税が相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産に加算するのに対して、相続時精算課税制度は加算期間に制限がなく全ての贈与財産を贈与時の価額で加算するというものです。
(改正内容)
・相続時精算課税制度の場合一度この制度を選択したら、今後少額な贈与があったとしても全て申告する必要がありましたが、110万円の基礎控除を設けたことで110万円以下の贈与については申告する必要がないということです。
また、特定贈与者が死亡した場合に相続税の課税価格に加算される当該贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした残額になります。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。
(ポイント)
大幅な改正ですね。
相続時精算課税制度を利用した後の少額贈与に対する事務負担を減らすとともに、相続発生時に加算される贈与財産の価額を減少させるということですね。
・・・ということは、110万円以内で相続時精算課税制度を選択し、その後110万円以内の贈与を継続していけば3年以内の加算にも含まれないということになります。
本当でしょうか?
詳細な情報が出るのを見守っていきたいですね。
(2)相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等について、次の見直しを行う。
・相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
(改正内容)
・現行の相続開始前3年以内の贈与加算から相続開始前7年以内の加算に改正されました。(ただし、加算される財産のうち3年以内の財産以外の財産(4年~7年)については加算額の合計額から100万円を控除した残額となっています。)
上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。
(ポイント)
みなさんが一番気になっていたポイントですが、相続開始前7年以内の財産が相続税に加算されることになりました。
対象となる贈与財産は令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産になります。
例えば令和6年1月に贈与を行った場合、
改正前
令和10年2月相続開始・・・加算なし(令和7年2月以降(3年以内)の贈与でないため)
改正後
令和10年2月相続開始・・・加算対象(相続開始前7年以内に該当するため)
【まとめ】
国としては若年世代に早期に財産を移転させ、経済の活性化を求めています。
また同時に「富裕層の家系は富裕層のまま」ということを望んでいません。
今後の見通しですが、暦年課税制度から相続時精算課税制度へ移行していくことが予想されます。
・暦年課税制度は令和6年から加算対象期間が7年になるので、同制度を使うのであれば令和4年、令和5年の2年間になるでしょう。
(贈与者の年齢が若く、ある程度まとまった金額を贈与したい場合はそのまま暦年課税制度を使うほうがいいでしょう。)
・令和6年以降は相続時精算課税制度に特別控除2,500万円のほかに110万円の基礎控除が設けられるとのことなので、110万円の贈与を引き続き行いたい方は相続時精算課税制度に移行することになりそうです。
・いずれにしても現在の概算による相続税額を算定し具体的な相続対策を計画的に行うことが節税対策には必要になってきます。
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