相続税調査における家族名義預金の税務判断

コラム

2021年12月15日 水曜日

前回(R3.12.8公開)家族名義預金の税務上の判断について掘り下げていきましたが、今回は具体的な家族名義預金の判断基準について説明してみたいと思います。

 

前回ご説明したとおり、相続税の税務調査では家族名義預金・名義株式などの取扱いについて税務署側と納税者側とで認識のずれがあることから、家族名義預金等が申告漏れとなり修正申告をせざる負えない状況になっています。

 

この預金は誰の財産なのか?

 

過去の裁判例から以下のような基準を基に名義預金の判断が行われています。

 

【名義預金の判断基準】

・その財産の原資を捻出したのは誰か

・その財産の管理・運用を行っていたのは誰か

・その財産から発生する利益は誰が受けていたか

・過去に贈与の事実があったのか

・相続税調査の場合は被相続人と名義人との関係は何か

 

では、裁判例を参考に具体的な事例で説明していきます。

 

【具体的事例】

 

《ケース1》 亡くなった父親が長男名義の預金を管理していた場合

 

亡くなった父親の財産を整理していると、父親の預金通帳と一緒に長男名義の預金通帳が発見された。

長男はその預金の存在を知らなかった。

 

家族名義預金で最も多いケースですね。

 

上記の判断基準に当てはめていくと

・預金の原資は父親の預金から捻出している

・預金通帳・印鑑の管理は父親が行っている

・預金利息についても父親が管理している通帳に入金されている

・通帳の名義人である長男はその預金の存在を知らない

・父親が長男の将来のことを考え長男名義で預金していた

 

ケース1の場合は典型的な家族名義預金です。

贈与契約もなく、また、財産の移転も行われていないことから父親の財産と認定されます。

 

父親の財産であることから、当然相続税の申告に計上すべき財産となり、仮に申告していなければ重加算税の対象に十分なりえる状況です。

 

 

《ケース2》 ケース1の場合で、長男がその預金の存在を父親から聞かされていた場合

 

この場合も父親の財産となります。

 

仮に口頭での贈与契約があったとしても、対象物が父親の管理下にあり長男が自由に使うことができない状態であれば、贈与があったとは認められないからです。

 

《ケース3》 ケース2の場合で、長男が贈与税の申告をしていた場合

 

これもよく勘違いされているところですが、申告しているからといって贈与の事実があるというわけではありません。

贈与があり、申告義務がある方が申告し、納税するというのが正しい流れです。

 

今回は、家族名義預金の取り扱いについて少しだけ説明しましたが、他にも専業主婦が生活費の余剰資金を妻名義で作っていた場合や家族名義の株式など判断が困難な財産もたくさんあります。

 

相続税の申告をする際の家族名義預金・名義株については特に注意が必要です。

 

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