相続税における未分割の取扱いについて

コラム

2021年2月21日 日曜日

相続税の相談を受ける中で最近多い内容が、相続税の未分割についてです。

 

今日は相続税の未分割について整理していきたいと思います。

 

【申告期限について】

相続税の未分割の相談を受ける中で一番多いのが「うちは相続財産の分割がまだできていないので分割が確定するまでは申告しなくていいのでは。」という内容です。

 

相続財産がまだ分割できていないからといって申告期限が延長になるということはありません。

 

相続財産が申告期限までに分割できていない場合は、民法による法定相続分で申告する必要があります。

 

(例)相続人が配偶者、長男、長女の場合。

民法による法定相続分は、配偶者1/2、長男・長女がそれぞれ1/4となります。

 

 

【なぜ相続財産の分割ができないのか】

相続財産の分割がうまくいかないケースには様々なパターンがあります。

その多くは財産の取り分であったり、財産の種類であったりします。

中には感情論の問題や、相続財産が全て把握できないなどケースは様々です。

 

【具体的な申告手順について】

ではいったい、相続財産が未分割の場合はどのような申告手順になるのかを説明していきます。

 

1 民法による法定相続分により申告期限内に申告する。

先に述べたように、相続財産の分割ができていないからといって申告期限が延びる訳ではありません。期限を過ぎてしまうと加算税や延滞税といった余分な税金まで支払う必要が出てくるので、必ず期限までに申告するようにしましょう。

 

相続税の申告というのは各人ごとの申告です。

 

例えば他の相続人と未分割申告の連絡がつかず、同時に申告することが困難な場合は別々に申告することも可能です。

 

なお、未分割で申告する際は、「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減」などの特例は使えません。結果として税負担が大きくなるので、分割申告より多くの納税資金の確保も必要となります。

 

また、分割が確定した際にこれらの特例を適用する場合には、「申告期限後3年以内の分割見込み書」を未分割の申告書とともに税務署長に提出する必要があります。

 

2 更正の請求又は修正申告書の提出

財産の分割が確定した場合は、確定したことを知った日から4か月以内に更正の請求又は修正申告をする必要があります。

 

確定した財産が法定相続分より少ない場合は更正の請求、法定相続分より多い場合は修正申告ということになります。

 

なお、申告期限から3年以内に遺産分割が確定しないことについてやむを得ない事情がある場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出する必要があります。

 

3 遺産分割について

《協議による分割》

家庭裁判所等を通さずに、共同相続人で協議する方法です。

遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名・押印が必要となります。

 

《調停により分割》

共同相続人間で協議したが、その分割がまとまらなかった場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。

相続人全員が合意した場合、調停調書が作成されます。

 

《審判による分割》

共同相続人間の協議でまとまらなかった場合や、調停が不成立だった場合には、調停手続きから審判の手続きに移行されます。

審判の場合は、裁判官が職権で調査を行い、審判が下されます。

 

《訴訟による分割》

審判の内容に不服がある場合2週間以内に即時抗告を行わなければいけません。

最終的には裁判での争いになります。

 

4 相続争いをなくすために

相続争いの多くは共同相続人間によるコミュニケーション不足です。

 

生前に相続財産の価格や相続税の負担額を把握し、相続人間で概算による話し合いを進めることで相続争いを防ぐこともできます。

 

相続争いに財産の大きさは関係ありません。「うちはそんなに財産がないから関係ない。」ということはありません。

 

一度機会を作り相続人間で話し合ってみることはとっても重要な作業だと思います。

相続争いには時間と資金と精神的苦痛が伴いますから。

 

※相続争いが発生した場合、税理士は非弁行為にあたるため調整役にはなれません。(弁護士法72条)

 

 

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