相続時精算課税について

コラム

2020年12月15日 火曜日

今回は、相続時精算課税について確認していきます。

 

【制度の概要】

特定の贈与者から贈与を受けた財産について、暦年課税に代えて相続時精算課税を選択した場合には、その贈与者から1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算し、将来その贈与者が亡くなった時に、相続を受けた財産と精算課税で贈与を受けた財産を合算して相続税を計算する制度です。

暦年課税の基礎控除額110万円に対して相続時精算課税の特別控除額は2,500万円となります。

 

【制度の適用要件】

(適用対象者)

贈与者・・・贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母や祖父母であること

受贈者・・・贈与を受けた年の1月1日において20歳以上で、贈与を受けた時において贈与者の子や孫であること

 

(適用手続)

贈与税申告書の提出期間内に「相続時精算課税選択届出書」を贈与税申告書及び添付書類とともに受贈者の所轄税務署長に提出します。

 

【贈与税額の計算】

通常の贈与(暦年課税:基礎控除110万円)の場合は、その人が1年間に受けた贈与の金額から基礎控除額110万円を控除し、残額に対して税率(10%~55%)を掛けて贈与税額を算出します。

例えば現金1,000万円の贈与があった場合の贈与税額は

1,000万円-110万円=890万円

890万円×40%-125万円=231万円

贈与税額231万円となります。

非常に大きな税金ですよね。

 

一方、相続時精算課税はどうかというと

同様に現金1,000万円の贈与があった場合の贈与税額は

1,000万円-1,000万円(特別控除額)=0円

贈与税額0円となります。

 

【注意点】

この制度は期限内に申告することが要件となっていますので、期限を1日でも過ぎてしまうとこの制度を適用することはできません。

期限を過ぎてしまうと必然的に暦年課税(基礎控除110万円)が適用され上記のように大きな税負担となってしまいます。

 

またこの制度は、一度その贈与者(特定贈与者という)からの贈与について相続時精算課税を選択した場合は暦年課税に戻ることはできません。

暦年課税の場合は年間に受ける贈与の金額が110万円以内の場合は贈与税がかからないので特に申告する必要もありませんが、相続時精算課税を適用した場合はたとえ贈与金額が110万円以内の少額なものでも、必ず申告の必要があります。

 

【相続時精算課税制度はお得?】

相続時精算課税制度と暦年課税制度の一番大きな違いは、贈与者が死亡した時です。

暦年課税の場合、贈与者が死亡したときに相続財産に加算される贈与財産は、贈与者が死亡する3年以内に相続人に対して行った3贈与財産だけになりますが、相続時精算課税の場合はその制度を受けた全ての財産が贈与時の価格で加算されます。

 

例えば贈与時に評価額1,000万円の不動産が相続時に300万円に評価が下がっていたとしても相続税に加算される財産は1,000万円になってしまうということです。

 

【節税効果】

はっきり言って節税対策として利用することは難しいと思います。

上記で申し上げたとおり、相続時精算課税を適用した財産は全て贈与時の価格で相続財産に加算する必要があります。

将来評価額が確実に上がるものを、評価額が低いうちにこの制度を利用する場合以外は、相続税の節税対策にはなりません。

暦年課税を適用した相続税対策の方が効果は大きいと思われます。

 

【結論】

この制度は少ない税負担(贈与税に限る)で父母や祖父母の財産を生前に利用することができるという制度です。

贈与者が死亡した時に贈与税ではなく相続税で精算されます。

相続税の節税対策としての効果はあまり見込まれません。

 

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