死亡保険金と相続税の節税について
コラム
2020年9月27日 日曜日
以前のコラムで相続税と死亡保険金の関係について触れましたが、ここでおさらいをしてみたいと思います。
相続税がかかる財産は、原則として民法の規定に従って相続又は遺贈(遺言)によって取得した財産です。
また、相続又は遺贈によって取得した財産でなくても実質的に相続又は遺贈によって取得したものとみなされて相続税がかかるものもあります。
被相続人の死亡によって取得した生命保険契約の保険金の内、被相続人が負担した保険料に対応する部分の保険金はここでいう「みなし相続財産」として相続税がかかる対象となります。
ここで勘違いしてはいけないのは、「みなし相続財産」は相続税がかかる対象にはなるけれど実際に相続税が発生するかどうかはケースによって全然違うということです。
みなさんが良くご存じの生命保険の非課税枠というものがあります。
「法定相続人の人数×500万円」です。
下記の場合で検証してみたいと思います。
・契約者 夫
・被保険者 夫
・保険金受取人 妻
・相続人 妻、長男、次男
・死亡保険金 3,000万円
この場合、死亡保険金3,000万円については、亡くなった方の「みなし相続財産」となり、相続税の課税の対象になります。
ただし、相続人が受け取った保険金には非課税枠が設けられています。
つまりこのケースの場合
500万円×3人×3,000万円/3,000万円=1,500万円(非課税金額)
3,000万円(死亡保険金)- 1,500万円(非課税金額)=1,500万円となります。
このケースは妻が受取人でも、長男・次男が受取人でも、生命保険の非課税金額について変わりはありません。
ここまではみなさんよくご存じかと思います。
では次に受取人が孫だった場合はどうなりますか。
通常孫は法定相続人ではありません(代襲相続を除く)ので、孫が受け取った保険金について非課税枠はありません。
このケースの場合3,000万円の死亡保険金全てが相続税の課税対象となるわけです。
ここで大事なのは課税の対象になるだけで必ずしも相続税が発生するわけではないということです。
相続税がかかる方というのは「課税価格の合計額が相続税の基礎控除額を超える場合」です。
上記の例でいくと、基礎控除額は3,000万円+3人×600万円=4,800万円です。
つまり被相続人の財産が3,000万円の生命保険金を含めて4,800万円以下であれば孫が生命保険金3,000万円を取得したとしても相続税はかからないということです。
そんなことあたりまえじゃないか。と思われる方もいるかと思いますが、使い方によれば大きな節税効果が期待できます。
相続税の節税を考えるうえで注意しなければいけないことがいくつかあります。
・二次相続を含めて相続税を検討する
・誰に財産を相続させるべきか
・配偶者がいる場合は配偶者の税額軽減の特例をどこまで利用するか
・死亡保険金の受取人を誰にするか
・生前贈与による節税を検討する場合は相続開始前3年以内を意識した贈与が必要
・相続開始前3年以内の贈与加算は相続又は遺贈により財産を取得した者であること
・孫が生命保険の受取人の場合は遺贈扱いとなるため3年以内の贈与加算の対象になる
一般的に財産移転の順序として
「夫→ 妻・子 → 孫」 又 は 「夫 → 妻 → 子 → 孫」となっています。
第一次相続として考えられるのは「夫→ 妻・子」又は「夫 → 妻」です。
夫から妻への相続は、配偶者の税額軽減などにより手厚く保護されていますが、二次相続は相続人も少なくなり一時相続に比べ税負担が大きくなる可能性があります。
一時相続では夫のみの財産により相続税はかからないが、二次相続では夫の財産+妻固有の財産となり相続税の基礎控除額も減少するからです。
生命保険の受取人を相続人以外にすることは、生命保険の非課税枠が使えない、相続税がかかった場合は税額が20%加算される、相続税がかかる場合は3年以内の贈与加算の対象にもなる等のリスクはありますが、悪い面だけではなく使い方によれば大きな節税効果が生まれる可能性があるということです。
節税対策で大事なことは詳細なシミュレーションと親族の協力及び事前の協議です。
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