被相続人が外国人である場合の相続税の計算

コラム

2020年8月19日 水曜日

現在日本には多くの外国人の方が生活しています。

そこで今回は日本に居住している外国人の方がお亡くなりになった場合の相続税の課税関係について整理していきたいと思います。

※主に中国人の方が日本でお亡くなりになったケースを例とします。

 

【相続と相続税】

(どういった場合に相続税の申告が必要となるのか)

相続税とは、相続又は遺贈により財産を取得した場合に、その取得した財産の価格を課税標準として課される税金です。

そして相続又は遺贈により財産を取得した人全員の取得財産の合計額が相続税の基礎控除額を超えている場合に相続税の申告が必要となります。

 

(どこの国の法律によって相続手続きが決まるのか)

ここで問題となってくるのが、亡くなった方が外国人の場合、どこの国の法律によって相続財産の範囲、相続人の決定(相続権の有無)などの相続手続きを行うかということです。

 

このような場合に、どこの国の法律によって物事を決めるか(準拠法)については「法の適用に関する通則法」(以下通則法という。)という法律があります。

原則としては、「相続は被相続人の本国法による。」と規定されており(通則法第36条)、例えば日本で生活している中国人の方が亡くなった場合の相続手続きは中国法で行うということになります。

 

ただしこれは原則であり、例えば中国の場合、日本の「法の適用に関する通則法」と同等に位置する「中華人民共和国渉外民事関係法律的用法」というものがあり、同法31条によると「法定相続については、被相続人が死亡した時の常居所地法を適用する。ただし、不動産の法定相続については、不動産所在地法を適用する。」と規定されています。つまり不動産以外については日本の法律により相続手続きを行い、不動産についてはその不動産の所在地の国の法律により相続手続きを行うということです。

 

こういった日本の通則法で「相続は被相続人の本国法による。」と規定しているのに、相手国の法律で「法定相続については、被相続人が死亡した時の常居所地法を適用する。」となっていた場合一体どっちの法律を適用するのかと疑問が生じるところですが、日本通則法によると、「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべき時は、日本法による。」(反致)(通則法41条)と規定されていますので、この場合は日本法により相続手続きを行います。

 

(相続したどの財産に相続税がかかるのか)

相続税の課税に関して、被相続人の国籍は関係ありません。日本の相続税は、被相続人・相続人の住所と財産の所在によって課税範囲が決まります。

 

納税義務者の範囲としては、大きく「無制限納税義務者(全世界の相続財産に課税)」と「制限納税義務者(日本国内の相続財産に課税)」に分かれます。

納税義務者の区分の詳細については割愛しますが、お亡くなりになった方の住所が日本国内であり、相続人が日本に住所がある日本人の場合は、相続人が相続により取得した全世界の財産が相続税の課税の対象となります。

 

(相続税の計算)

1 課税財産の把握

被相続人・相続人の住所・国籍等により課税財産を把握します。

2 課税財産の相続人の把握

相続の準拠法により相続人を把握します。

3 各人の課税財産の合計額から相続税の総額を計算

各相続人が相続により取得した財産の価格の合計額から日本の民法による相続人数で計算した基礎控除を控除し日本の民法による相続分により相続税の総額を計算します。

4 相続税の総額を各人の課税価格の割合により按分計算

相続税の総額を準拠法により相続した相続人の課税価格の按分割合により按分計算する。

 

ちなみに中国法によると

法定相続・・・第一順位は配偶者・子・親である。同一順位では相続分は等しい。

夫婦間の財産関係・・・夫又は妻の個人所有に属する財産(婚姻前の特融財産)を除き、婚姻期間に夫婦が得た財産については全て夫婦の共同所有となる。(中国婚姻法第17条)

 

日本に居住する中国人夫婦のどちらかが死亡した場合

不動産・・・不動産の所在地法に基づき相続人が決定

不動産以外の財産・・・日本の民法により相続人が決定

夫婦財産について・・・中国人夫婦の場合は夫婦共有財産となることから夫婦財産の確認が必要

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