相続税調査と家族名義預金の関係について

コラム

2021年12月1日 水曜日

今回は相続税調査における家族名義預金・名義株との関係について説明したいと思います。

 

【税務調査が行われた場合の申告漏れ割合】

国税庁が報道発表している「令和元事務年度における相続税調査等の状況」によりますと、税務署が相続税の実地調査を行った(10,635件)内申告漏れがあった(9,072件)割合はなんと85.3%にもなります。

 

ちなみに高松国税局管内の税務署における税務調査の申告漏れ割合は実に94.4%です。

 

つまり税務署が調査に来るということは、かなりの確率で何らかの申告漏れがあるということを覚悟しなければならないということです。

 

【どのような財産が申告漏れになるのか】

相続税の申告の場合、経済的価値のあるものは全て申告しなければならないことになっています。

 

代表的なものとしては、現金、預貯金、不動産、株式などの有価証券、生命保険金などがあります。

 

その中で最も申告漏れとなりやすいのが預貯金です。

 

なぜ預貯金が申告漏れとなりやすいのか?

 

それは預貯金を申告するときに「亡くなった方本人の名義の預金」のみを申告している場合が多いからです。

 

相続税の申告をする場合、国税庁が毎年発行している「相続税の申告のしかた」にも記載のあるとおり家族の名義になっている預金(家族名義預金)についても申告が必要な場合があるからです。

 

「相続税の申告のしかた」から抜粋

Q&A 家族名義の財産は?

 

問:父(被相続人)の財産を整理していたところ、家族名義の預金通帳が見つかりました。この家族名義の預金も相続税の申告に含める必要があるのでしょうか。

 

答: 名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。したがって、被相続人が購入(新築)した不動産でまだ登記をしていないものや、被相続人の預貯金、株式、公社債、貸付信託や証券投資信託の受益証券等で家族名義や無記名のものなども、相続税の申告に含める必要があります。

 

【実際の税務調査時の状況】

では実際税務調査において家族名義預金が発見された場合どのような展開になっていくのか説明したいと思います。

 

前提条件として、申告時には被相続人本人(亡くなった父)名義の預金しか申告しておらず、税務調査によって家族名義預金(長男)があることが発見された場合とします。

 

税務署:この預金は、名義は長男になっているが実際預金したのは父親であるので父親の相続財産として申告すべきである。過去に贈与税申告の実績もない。

 

といったやり取りが行われ、結果として申告漏れ扱いとなり修正申告をするはめになるということです。

 

ここで納税者側の反論としては

 

納税者:確かに実際預金を行ったのは父男であるが、父からは10年くらい前に「この預金はお前に贈与する。私が死んでも相続税の申告はする必要はない。」といわれている。この預金は私が父から贈与を受けたものであり相続税の申告をする必要はない。また贈与税の申告はしていないが贈与税の時効は6年であると聞いているので贈与税の申告もする必要がない。

 

というものです。

 

ポイントは過去に贈与が本当に行われていたのか、その判断基準はどこにあるのかというところです。

 

次回はこの家族名義預金の税務判断について説明したいと思います。

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